2016.01.21
【投書】若者よ、聖騎士と暗黒騎士を混同するなかれ

 我は聖騎士ギルドで働く職員である。神官ギルドの同僚と共に、ひとりでも多くの迷える者たちをルミアリスの信仰に正しく導くべくため、日々、祈りと鍛錬の毎日を送っている。
 しかるに近年、義勇兵としてこの街を訪れる者のなかには、ルミアリスの加護に背を向け、あろうことか暗黒神スカルヘルに帰依し、暗黒騎士(ドレッドナイト)を目指す者が後を絶たない。先日も、街で出会った義勇兵見習いとおぼしき若者を聖騎士に勧誘したが、返ってきた返事は、

「無理。無理無理無理。聖とか光なんて俺のフィーリングに合わねぇ! 俺が目指すのはドレッドナイト! 暗黒騎士だっ! 名前からしてかっけーだろ!」

 というものであった。なぜ彼ら義勇兵たちは光に目を背け、闇や死、暗黒などといった言葉に惹かれるのか。何かの病気ではないかと、神官たちも話している。それはいい。若者たちにはびこる新種の病については、我が学僧たちの研究をまとう。

 さしあたり問題なのは、騎士と名乗っているからと言って、暗黒騎士は、戦士や聖騎士とまったく異なる職業であると理解していない若者たちだ。

 パーティの先頭に立ち、仲間たちの盾役となる職業には戦士がある。同じく、我々、聖騎士も戦闘においては同様の役割を担い、剣や戦槌と盾を持って戦う。純粋な盾役として特化した戦士に対し、ルミアリスに帰依した我々は、功徳を積むことによって光魔法を扱うことができる。常には戦士として戦い、必要に応じてはもうひとりの神官となって病や毒を得た味方を癒す。そうして仲間を守り、癒すのが我らだ。

 他方、忌々しきスカルヘルの先兵、暗黒騎士には我らのような戦い方は逆立ちしてもできまい。騎士とは名ばかり、薄い防具しか身につけず、ひたすら殺生に特化した連中だからだ。
 防御もあくまで回避に特化しており、これでは自分はよくても仲間の盾役となるのは不可能。騎士とは名ばかりで、戦闘における役割は、狩人や魔法使いなどと同様の攻撃役である。
(なんでも殺生を積み重ねることで不浄な悪霊を呼び出せるようになると聞くが、これも日中は力が弱まり、しかも最初のうちにできることと言えば、敵の存在を感知してくれる程度のもの。この悪霊がまともな戦力となるまでにどれほどの悪徳を積み重ねる必要があるかと思うと……怖気が走る。おおルミアリスの光明あれかし)

 ともかくだ。仲間から戦士となることを求められた者が、ルミアリスの信仰に目覚めて聖騎士を目指す。これはいい。求められる盾としての役割をきちんと果たせるからだ。だがもし邪神にそそのかされて暗黒騎士になってしまったら……残念だが盾役のいないそのパーティは早晩にスカルヘルの腕に抱かれることとなるだろう……。

 若者よ、暗黒神の声にそそのかされることなかれ。
 ルミアリスの加護の元、聖騎士となって、光の中を進め。

匿名希望(聖騎士ギルド所属)
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ん。
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