2016.01.10
ようこそ辺境領オルタナへ

 この街の新たなる住民となった読者諸君、ようこそ辺境領オルタナへ。
 早速だが宣言させてもらおう。オルタナは辺境であって辺境でない、と。
 知っての通り、このグリムガル最大の人間族社会であるアラバキア王国は、峻険なる天竜山脈にまたがって存在しており、天竜山脈の南側を「本土」、そしてこのオルタナのある北側を「辺境」と読んで区別している。
 だが、賢明なる読者はご存じであろう。かつてはこの「辺境」こそがアラバキア王国の「本土」であったことを。

 百五十有余年前に現れた忌むべき「不死の王(ノーライフキング)」率いる諸王連合(後の不死の帝国である)の侵攻を受け、我々人間族はやむなく、天竜山脈の南への退避を余儀なくされた。つまりはこの「辺境」こそが我々人間族の本土だったのだ。
 オルタナの北西約四キロの地点にある大都市の残骸――かつてアラバキア第二の都市として栄えたダムローの廃墟を訪れれば、当時の繁栄がうかがい知れよう(ただし観光の際はゴブリンに十分注意すること)。

 だが、今から約百年前、不死を謳った不死の王(ノーライフキング)が死に、不死の帝国が烏合の衆と成り果てて瓦解したことで、人間族による反撃の時が来た。かつての本土を奪還すべく打ち込まれた、楔(クサビ)。それがこの要塞都市オルタナである。
 やがて我々が不死の帝国の残党どもを討ち滅ぼし、奪われた土地を取り戻した暁には、この辺境は再び「本土」の名で呼ばれることとなるだろう。そう、このオルタナは、けして辺境ではない。未来のアラバキア王国の新たなる中心であり、いずれはダムローなど比較にならない規模へと発展を遂げるはずである。

 現在のオルタナはお世辞にも大きいとは言えないが、そのかわり都市としての機能はあらかた兼ね備えた一個で完結した社会である。鍛冶、大工、石工、調理師等の各種ギルドも設置されており、最前線の拠点として完成している。もちろん我こそはと思う者は、義勇兵に志願して、本土奪還の戦いに身を投じてほしい。
 親愛なる読者諸君、どうか、この街でおのれの力を存分にふるい、オルタナの……ひいては人間族の、一層の発展に力を貸してもらいたい。

 本紙「オルタナニュース」は、そんなオルタナの明日を作る読者諸兄に、有益なる情報を提供することを約束するものである。

(本誌編集長)
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